「日本は生産性が低い」「DXで生産性を上げよう!」といった言葉は、最近よく聞く話です。
近年、働き方改革による勤務時間の適正化やコロナによって加速したテレワークの定着など労働環境は大きな転換期を迎えています。
「残業でなんとかする」が当たり前であった日本の労働環境にとって、 「労働生産性を上げて解決する」への転換はどの企業も取り組むべき重要な課題 です。
ここでは、労働生産性についての定義と日本の現状、そして労働生産性を上げるためのポイントについて紹介したいと思います。
目次
労働生産性とは
そもそも、生産性とはなんでしょうか。
日本生産性本部では、 「生産性とは、生産諸要素の有効利用の度合いである」 と定義されています。 ( https://www.jpc-net.jp/movement/productivity.html )
何かを生産するためには、機械設備や原材料、人間などさまざまな生産要素が必要です。
生産性とは、これら生産要素を投入したときに得られる製品やサービスなどの産出物との割合をさします。
たとえば、最先端の機械を導入することで、 より効率的に製品を作成できるようになったとすると、生産性が高い状態 と言えます。 一方で、 機械を操作する人が使いこなすことができず、うまく機械が動かないとなると、生産性が低い状態 であると言えます。
最も一般的に使われる生産性は、 「労働生産性」 です。
労働生産性は「労働投入量1単位当たりの産出量・産出額」として表現されます。
すなわち、労働者1人あたり(1時間あたり)でどれだけの成果を生み出したかという指標になります。
「労働生産性が向上する」を生産性の式に当てはめると、
・同じ労働量でより多くの産出を作り出す (分子を大きくする)
・少ない労働量でこれまでの生産量を作り出す (分母を小さくする)
という状態で、まさに全ての企業に求められる重要なポイントなのは間違いないでしょう。
生産性の種類と計算方法
生産性には2つの種類があります。
・物的生産性
・付加価値生産性
物的労働生産性
生産するものの大きさや重さ、個数といった物量で測る生産性を「物的生産性」と言います。
主に製造業などにおける製品自体の生産量や、生産効率の時系列的な推移を知るときには物的生産性が利用されます。
付加価値労働生産性
金額ベースの価値、つまり付加価値で測る生産性を「付加価値生産性」と言います。
付加価値の計算方法は、「控除法(中小企業庁方式)」と「加算法(日銀方式)」があります。
控除法(中小企業庁方式)
・付加価値 = 売上 – 外部購入費※
※ 外部購入費:原材料費、外注加工費、機械の修繕費、動力費など
加算法(日銀方式)
・付加価値 = 経常利益 + 人件費 + 賃借料 + 金融費用 + 租税公課+ 減価償却費
控除方、加算法で産出する付加価値をもとに労働生産性の産出が可能です。
トップダウンで計算するかボトムアップで積み上げるかの違いはありますが、イメージとしては粗利に近い概念になます。
日本の労働生産性の動向
「日本は生産性が低い」というのはよく聞く言葉ではありますが、本当に低いのでしょうか?
労働生産性の国際比較2022 では日本の労働生産性についてレポートされています。
日本の労働生産性について見てみると
・OECD参加国中 29位 / 38ヶ国中 (時間あたりの生産性 27位 / 38ヶ国中 )
・主要先進国中 7位 / 7ヶ国中
と、かなり深刻な日本の労働生産性の現状が見えてきました。
例えば、アメリカと日本の労働生産性を比較すると 約1.87倍 の違いがあります。
国際化が加速する世界全体において、日本だけでビジネスを考えればいい時代は終わりが近ついています。
近年、どの業界やサービスを見ても世界中の様々な企業と競争する機会が増えているのは言うまでもありません。
各企業が 「労働生産性を上げる」ということに真摯に取り組む必要がある というのが、日本の中の争いだけではなく、世界中の企業と戦っていくためには非常に重要です。
もちろん、企業努力だけではなく国全体で取り組んでいかないと、世界的な日本のポジションは落ちていく一方でしょう。
日本の労働生産性が低い3つの原因
では、なぜ日本の労働生産性が他国と比べて低いのでしょうか。
考えられるその理由について3つ解説します。
1. 年功序列という給料体系
日本の多くの企業では「年功序列制度」により、勤続年数が長い人ほど待遇が良くなるという制度が採用されてきました。
年功序列制度では、会社への帰属意識の高まりや人事評価がしやすいなどのメリットがありますが、 年齢と経験年数により給料が決まるため成果と評価が連動しにくい というデメリットがあります。
「評価のために頑張りたい」「成果を上げて給料を増やしたい」と言った目的意識が持ちづらいです。
そのため 「より成果を出すためには」「より効率的に業務を進めるためには」というような生産性の向上に直結するアクションに取り組みづらくなってしまいます 。
近年では、年齢ではなく個人のスキルに応じた給与体系である「年俸制」にシフトする流れも増えてきますが、ドラスティックに変更することが難しいところである以上、年功序列からの脱却は時間をかけて一般化していく流れといえます。
2. 残量ありきの長時間労働
2022年コンサル大手が社員に長時間労働をさせていていたことで書類送検されたことは記憶に新しいかもしれません。
業界にもよりますが、残業ありきの長時間労働が常習化しているという会社は少なくはないです。
労働時間が長いほど労働生産性が下がる というのは、世界の労働生産性を比較した時に事実として確認ができます。 ( 産業21-94号 より)
また厚生労働省が発表している 睡眠に関する指針 として 、 「人間が十分に覚醒して作業を行うことが可能なのは起床後 12~13 時間が限界 であり、起床後 15 時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下する」 と紹介されています。
もし7時起床、9時から仕事を開始したとすると、19時以降は集中力が低下し作業効率が落ちてしまいます。
その状態で仕事をしたとしても、時間だけが経過し思ったような成果を上げられないといったケースはあるのではないでしょうか。
生産性が上がらないのは明白であり、残業 = 生産性の低下につながると言っても過言ではありません。
いずれにせよ生産性を上げるためには、無駄なことを省いてより効率的に仕事をすることで、労働時間を適正化していくというのが重要なポイントになってきます。
3. デジタル化の遅れ
デジタル化 = 生産性向上 とは一概にはいえませんが、 日米のデジタル投資の比較を見ると、いかにデジタル投資が必要かというのが透けて見えてきます 。( 第1回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 )
残念ながら日本のデジタル投資は1994年からほとんど増えていません。
労働者が多ければ、人海戦術で生産性を上げるというのが可能な時代もありましたが、我が国では労働者はすでにピークを過ぎており、少ない人材でいかに世界と戦っていくかというのが問われます。
世界中でクラウドサービスやSaaSがスタンダードとなっている現在、しっかりとしたデジタル投資をすることで生産性を上げるというのが重要です。
労働生産性を向上させる3つの方法
前述の通り、生産性を上げるためには、社員一人一人が生み出す利益(付加価値)を高める必要があります。
そのために必要な3つの方法を紹介したいと思います。
1. 業務の見える化
まず始めるべきポイントとしては、業務の見える化です。
メンバーひとりひとりが 「今何をやっているのか」「今後何をやる予定なのか」「どれくらいの稼働で業務をしているのか」 というのが管理できていないと、そもそも改善できる余地があるのかもわかりません。
業務の見える化をすべきケースは2つあります。
1つ目は、 そもそも社員が何をやっているか正しく管理できていないケース です。
このケースでまずオススメしたいのが、「Microsoft Excel」「Google スプレッドシート」を使ったシンプルな業務見える化です。
別の記事で、やり方やExcelテンプレートなどを紹介しているのでご興味あればご参考にしてください。
> リソース管理に重要な3つのこと(Excelテンプレートあり)
もし「見える化はできているけど管理が大変。」「もっと効率的に管理したい」といったのでお困りであれば、 リソース管理ツール の導入をオススメします。
>【比較!】アサイン管理ツール・リソース管理ツールまとめ~システム開発会社が選んだ5選!~
2つ目は、 やっていることはわかるが、効率的にできているかわからないケース です。
このケースでは、メンバーが各プロジェクトやタスクに対して、どれくらいの稼働(工数)がかかっているかを状況を見える化することが重要です。
稼働状況が分かれば、多くの時間がかかっているタスクや定期的に稼働がかかるタスクなどが浮き上がってきます。
それらについて改善をしていくことで、生産性の向上をすることができます。
2. 業務の標準化・効率化
日本では給与体系を背景に属人化しブラックボックス化した業務というのが増えがちです。
専任でやっているうちは良いかもしれませんが、担当者が辞めたりした途端に誰もわからない業務となったり、謎の引き継ぎ資料だけ残されるといったのはあるあるではないでしょうか。
まずは、身の回りで属人化してしまっている業務について
・そもそもその業務が本当に必要なのか
・無駄や手間を効率化できるところはないか
などの点検を行い、作業の効率化を図りましょう。
社内Wikiの整備やナレッジツールを利用し、業務や運用手順をマニュアル化することで、メンバー全員の共有財産として残すことができます。
3. 個人のスキルアップ
生産性を向上するためには、個々のスキルアップも不可欠です。
日本人の諸外国に比べて圧倒的に勉強時間が短い というのが「 未来人材ビジョン 」で報告されています。
また、4割以上の企業が “「技術革新による必要なスキル」と「現在の従業員のスキル」にギャップがある” との報告もあります。
日本の社会人が勉強しない理由としては、「年功序列により学習が給与に与える影響が少ない」「会社が個人への投資をしない」など色々なことが考えられます。
今や世の中には日々便利なツールが生まれており、簡単に使える時代です。
今やっていることを自分の力だけで解決するのではなく、便利なツールを使いこなすことで、より業務成果につなげられる機会も少なくありません。
企業としては、 学習の機会や給与の面といった社員の学習意欲を上げる制度面のフォロー はもちろん必要ですが、生産性を上げるためには、 各々が自身で取り組んでスキルを上げることが不可欠です 。
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